「認知症グループホームを追い出された高齢者がいるって本当?」と利用者様ご家族から質問されたら、介護職員のあなたはどう答えますか?
認知症グループホームに勤務したことのない介護職員ならうまく答えられないかもしれません。
勤務経験のある施設以外について、詳しく知らいない介護職員も多いでしょう。
もし、入居・退去基準やメリット・デメリットがわかれば、利用者様やその家族に説明することも簡単です。
さらに、認知症グループホームへの異動や転職で悩まなくなったりします。
そこで今回は、認知症グループホームを理解できるように、入居・退去基準やメリット・デメリットなどについて解説します。
認知症グループホームとは
まずは、認知症グループホームがどのような介護施設なのかについて、一つひとつ確認していきましょう。
介護保険法にもとづく介護施設
認知症グループホームは認知症高齢者グループホームともいい、認知症の方が入居し自立した生活をすることを目的とした介護施設です。
根拠法は介護保険法で、地域密着型サービスの一つです。
正式名称は要介護と要支援で分かれていて、要介護は「認知症対応型共同生活介護」、要支援は「介護予防認知症対応型共同生活介護」といいます。
一つの共同生活住居(ユニット)に5~9名という少人数の入居者が、家庭的な雰囲気のもとで地域住民と交流しながら生活しています。
なお、入居者は以下のようなサービスを受けられます。
● 認知症ケア
● 介護(入浴・排泄・食事など)
● 生活支援(食事の用意・洗濯・掃除)
● レクリエーション
● 機能訓練
働いている職員は
認知症グループホームには色々な職種の職員が勤務しています。
職種と勤務の条件は以下のとおりです。
● 介護職員:利用者3人に対して1人以上(夜間は1ユニットに1人以上)
● 計画作成担当者:施設ごとに1人以上(1人は必ず介護支援専門員)
● 管理者:3年以上の認知症ケア経験と指定の認知症関連研修の修了が必要
上記の職種をみて気づかれた方がいるかもしれませんが、職員配置基準では看護職員の配置の必要はありません。
ただ、認知症グループホームへの医療的ニーズ・看取り対応の増加により、看護職員を配置する施設も増えています。
認知症ケアが特徴
認知症グループホームの特徴はなんといっても認知症ケアです。
日頃のレクリエーションや、食事の用意・洗濯・掃除などの家事のサポートは、認知症の症状緩和を目指して行われています。
前述の5~9名の入居者が一つのユニットで生活することも、ストレスを少なくし認知症の進行を最小限にしようと考えてのことです。
また、顔なじみの入居者と穏やかに暮らせるように、一つの認知症グループホームの定員も27名(9名×3ユニット)が上限となっています。
施設数がどんどん増加中!
認知症グループホームは、認知症の方の増加という背景もあり以下のように急激に増加しています。
● 平成19年(2007年):8,776施設
● 令和4年(2022年):14,079施設
ただ、人気の施設ということもあり、特別養護老人ホームのように入居待ちがあるのが現実です。
各都道府県では認知症グループホームの設立が進むように、補助金制度を整備しています。
認知症グループホームの入居条件
認知症グループホームの概要を理解したところで、次は入居条件について確認していきましょう。
認知症でないと入居できない!
認知症グループホームには色々な入居条件があります。入居条件は以下のとおりです。
1. 要支援2・要介護の認定を受けている
2. 医師から認知症の診断を受けている
3. 施設と同じ自治体に住民票がある
4. 集団生活に支障がない
入居するためには上記の条件のすべてを満たす必要があります。
なお、1の条件で示しているように要支援1の方は対象外です。
また、4の条件に入居時に該当していても入居後に該当しなくなった場合は、退去しなければなりません。
退去についてはこの記事の最後で解説します。
生活保護受給者も入居できる?
生活保護受給者も認知症グループホームに入居できる場合があります。
ただ、どの認知症グループホームでも入居できるわけではなく、施設が生活保護法の指定を受けていることが必要です。
そのほかの住民票や認知症患者などの入居条件は、ほかの認知症グループホームと同じです。
入居を希望する方は、生活保護受給者を担当している福祉事務所のケースワーカーに相談するとよいでしょう。
認知症グループホームのメリット・デメリット
ここまで認知症グループホームの概要や入居条件について解説してきました。
さらに理解を深めるためにも、メリットとデメリットを二つずつ解説します。
認知症の症状が緩和する
メリットの一つ目は、認知症グループホームへ入居することで、認知症の症状の緩和が期待できることです。
前述の少人数体制や家庭的な雰囲気、地域交流などは、すべて認知症の緩和を目的とするものです。
また、認知症グループホームへ勤務する介護職員にとっては、専門的な認知症ケアが学べます。
同施設で行われる一つひとつのケアが、認知症の緩和を意識したものです。
認知症ケアを身につけ専門性を高めたいと考えている介護職員は、認知症グループホームの求人を探し、転職するのもよい選択といえるでしょう。
費用が安い
メリットの二つ目は、有料老人ホームと比較して費用が安いことです。
費用には初期費用と月額費用があります。
初期費用は入居一時金や保証金といわれ、賃貸物件を借りるときに支払う敷金のような費用です。
月額費用は利用料や住居費、食費などで構成されています。
なお、初期費用と月額費用の目安は以下のとおりです。
● 初期費用:0~20万円
● 月額費用:15~25万円
初期費用が0円という認知症グループホームもあります。
ただ、退去時の原状回復費用の支払いを考えると、少しでも初期費用があったほうが入居者やその家族にとっては安心です。
夜勤スタッフは1ユニットで1人しかいない
デメリットの一つ目は、介護職員が1ユニットに一人で夜勤することです。
介護職員は一人で1ユニットの5〜9名の入居者に対応します。
一人の介護職員が夜勤でみる入居者の人数としては、介護施設では一般的な人数かもしれません。
それに、一つの施設に複数のユニットがあるため、何かあればほかの介護職員に助けを求められます。
ただ、ユニットという空間で区切られていることを踏まえると、経験の浅い方にとっては不安に感じるでしょう。
入居者が追い出されることもある!?
デメリットの二つ目は、入居者が自分の意思に反して退去させられる可能性があることです。
退去の理由は以下のとおりです。
● 長期入院
● 医療依存度が高くなり施設で対応できない
● 費用滞納
● 暴力・暴言
● 迷惑行為
認知症グループホームは看護職員の配置が必須でないため、医療依存度が高くなると退去しなければなりません。
また、暴力・暴言・迷惑行為は、施設内での共同生活ができなくなってしまうため、退去を求められることが一般的です。
認知症グループホームなら穏やかな介護が!
認知症グループホームは、認知症の方が自立した生活ができる施設です。日頃の介護だけではなく、生活のサポートやレクリエーション、建物などのすべてが、認知症ケアにもとづいて考えられています。どうしても認知症グループホームで生活できない方は退去しなければなりませんが、認知症の症状の緩和が期待できる認知症の方に適した施設といえるでしょう。毎日を穏やかに過ごしたい認知症の方や、穏やかな介護をしたい介護職員の双方にとって、おすすめの施設ですよ。※掲載情報は公開日あるいは2023年09月28日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。