2024年度より新設される「こども家庭ソーシャルワーカー」。子どもに関する、あらゆる問題に対応するための専門の資格です。この記事では、家庭ソーシャルワーカーが担う仕事や、資格取得方法などをわかりやすく解説します。
【新設】こども家庭ソーシャルワーカーとは?
新たに導入されるこども家庭ソーシャルワーカーは、虐待や貧困など、こどもを取り巻く問題に対して専門的に対処するための資格です。新設される背景には、児童福祉法の改正があります。2024年4月から施行される内容のなかに「子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上」があります。こども家庭ソーシャルワーカーは、十分な知識や経験を持って子ども家庭福祉にあたることが求められます。そのほか、こども家庭ソーシャルワーカーの特徴は以下のとおりです。
児童福祉司の任用要件のひとつ
こども家庭ソーシャルワーカーの資格は、児童相談所で働く児童福祉司の任用要件のひとつとして位置づけられています。児童福祉司とは、児童相談所にてさまざまな問題を抱える家庭の援助を担う職員のことです。大変な仕事のため、これまで確保や定着が難しいことが課題とされてきました。任用資格を拡大することで人材確保や専門性の向上を図るねらいがあります。なお、開始時点では民間資格に位置づけられていますが、のちに国家資格化も検討されています。
児童福祉施設などで活躍する
こども家庭ソーシャルワーカーの資格を取得した人は、児童相談所や市役所、児童養護施設、児童発達支援センターなどでの活躍が期待されます。こども家庭ソーシャルワーカーの資格を持った人が増えることにより、虐待などの早期発見・対応が可能になります。こども家庭ソーシャルワーカーは、子どもを取り巻く環境がより良いものになるように尽力する仕事といえるでしょう。
こども家庭ソーシャルワーカーになるには
こども家庭ソーシャルワーカーの養成は、令和6年度から始まります。まずは、社会福祉士や保育士など、実務経験のある人が「国の基準を満たす認定機関が認定した研修等を経て取得する」とされています。施行開始にあたり資格を取得できるルートには以下のようなものがあります。
なお、どのルートからでも「こども家庭福祉指定研修」として18科目/計100.5時間の研修受講・修了が必要です。(以下、指定研修)ここからは、それぞれのルートについて詳しく解説していきます。
社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ人
社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持ち、こども家庭に関する相談援助の実務経験が2年以上ある人が受験できるルートです。
相談援助の実務経験とは、児童相談所や母子生活支援施設、児童養護施設などの児童福祉施設での経験を指します。そのほか、保健所や老人ホームなどによって家庭に対する支援をおこなったことが証明できる場合も実務経験として認められます。
社会福祉士・精神保健福祉士 有資格者ルートでは、指定研修を受講・修了したのち、資格認定試験に合格することでこども家庭ソーシャルワーカーになれます。なお、社会福祉士・精神保健福祉士の資格は取得しているものの、相談援助業務をおこなっていない場合は9科目/計24時間の追加研修が必要です。
こども家庭福祉の実務経験がある人
こども家庭福祉に関する相談援助実務経験が4年以上ある人が受験できるルートです。なお、この資格取得ルートは制度開始から期限のある経過措置として採用されています。
相談援助の実務経験として認められる施設は、社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ人で示し内容と同じものです。
こども家庭福祉 実務経験者ルートでは、3科目/計97.5時間のソーシャルワーク研修の受講・修了と、指定研修を受講・修了が必要です。すべての研修を終えたのち、資格認定試験に合格することでこども家庭ソーシャルワーカーになれます。
保育士資格を持ち保育所等で働く人
保育士資格を持ち、主任保育士などの立場で相談援助の実務経験が4年以上ある人が受験できるルートです。なお、この資格取得ルートは制度開始から期限のある経過措置として採用されています。
実務経験には、要支援児童などの対応や関係機関との連携の強化、地域連携推進員として子ども家庭福祉に関する知識・技術を用いた相談援助業務が必要です。または、保育所長や主任保育士、副主任保育士などとして、子ども家庭福祉に関する知識・技術を用いた相談援助業務をおこなっていることが条件となっています。
保育所等 保育士ルートでは、6科目/計165時間のソーシャルワーカー研修の受講・修了と、指定研修を受講・修了が必要です。すべての研修を終えたのち、資格認定試験に合格することでこども家庭ソーシャルワーカーになれます。
資格認定試験の概要
それぞれの研修を終えたのちにチャレンジする資格認定試験は、多肢選択式による出題で1日で終わるものが予定されています。なお、研修実施機関の決定や公表は2024年4月以降、認定試験実施に関する詳細公表は同年10月以降になります。こども家庭ソーシャルワーカーの資格取得を考えている人は、新たな情報を待ちながら準備を始めましょう。
こども家庭ソーシャルワーカーができること
子どもを取り巻く環境は年々複雑化しており、虐待や貧困、不登校など問題は絶えません。子どもが悩み苦しんでいる背景を十分に理解するには、学校や家庭、地域との連携が欠かせないものです。しかし、支援や援助を必要としている家庭が多く児童福祉士だけでは対応しきれていないのが現状です。そこで、関係する資格を取得している有識者がこども家庭ソーシャルワーカーの資格を得ることにより、それぞれの家庭に合った対応ができるようになると期待されています。
まとめ
この記事では、新たに導入されるこども家庭ソーシャルワーカーの資格について詳しく解説しました。児童福祉法の改正に基づいて新設されたこの資格により、子ども達が抱えるさまざまな問題に対して適切な対応がおこなわれる見込みです。受験資格を持つ人は、ぜひチャレンジしてみましょう!