保育士さんにはそれぞれの保育観があります。経験年数に関わらず保育士として大切にするものがあり、保育士さん同士が保育観に違いを感じると、それをきっかけとして人間関係のトラブルに発展することも。
保育観についてはお互いに簡単に譲れない部分が大きく、解決が難しいという声も多く聞かれます。子どもを大切に想う気持ちは同じでも、お互いの保育観を理解することはなかなか難しいものですよね。
今回は「保育観とは何なのか?」を考えながら、保育観の異なる保育士さんとの付き合い方について紹介していきます。
保育観とは?
保育観の意味を簡単に説明すると、「保育をする上での大事にしたい価値観や考え方」です。「子ども観」と呼ばれることもあります。子どもの成長や発達を促すにはどんな方法が適しているかを考えることは大切です。保育士さんは自分の保育観を胸に仕事に取り組むので、自分の保育観を持っていない方は今一度考えてみるのが良いでしょう。
保育観の違い
なぜ保育観は人によって異なるのでしょうか。それは、それぞれ育った環境や関わってきた人が違うからです。人の価値観は人間関係に大きく影響されるので、異なる環境で生まれ育ったのなら、出会う人も当然異なります。そして、保育観は自分の価値観を基に生まれるので、保育士の数だけ保育観も異なると言えるでしょう。
保育観の例
次に、いくつかの保育観の例をご紹介します。自分の保育観がまだ定まっていない方は、ぜひ参考にしてみてください。いろんな考えに触れることで、あなたの保育の幅がきっと広がりますよ。
子どもを一番に行動する
保育士さんは、子どもの命を預かる重い責任を担う職業です。そのため、子どもを一番に考えて行動する保育観を持つ人は多いようです。保育士さんの仕事は忙しいので、ひとりひとりにゆっくりと時間をかけることが難しいときもありますが、少しの時間だけでも子どもと向き合う時間をつくることは、大切な保育観と言えます。
子どもの可能性を引き出す
他の保育観として、見守る姿勢をとることで、子どものいろいろな可能性を引き出し、伸ばすことを大切にする考え方があります。子どもの積極性や創造性を伸ばすために、子どもが関心のあることをやらせ、保育士さんはそれが終わるまで根気よく待ってみましょう。
子どもが安心して生活できる
子どもは1日の長い時間を、保育園で過ごします。そのため、親と離れていても子どもに寂しさを感じさせることなく、保育園でも家と同じように安心してほしいという保育観です。子どもが居心地の良さを感じる場所を作るには、保育士さんは母親のように安心・信頼できる存在となり、ひとりひとりに合わせた保育を行う必要があります。
コミュニケーションを大切にする
保育という仕事は、子どもと関わるだけでなく、職場の保育士さんや保護者とのコミュニケーションも大切です。それぞれと連携を取って進めることで、よりよい保育を提供することに繋がるため、子どもや職場の保育士さん、保護者とのコミュニケーションを十分に取るという考えも、大切な保育観です。
保育観に正解はない
例保育士さんひとりひとりによって考え方が変わってくるので、保育観に正解はありません。そのため、「自分の保育観が間違っているかも」」なんて不安に思う必要はありませんよ。以下では、保育士さんの異なる価値観を例にしてご紹介します。
【子どもが迷路で遊んでいて、本来の遊び方ではない遊び方をしていた】
保育士さんA:「迷路はこうやって遊ぶんだよ」と教える。
保育士さんB:正しい遊び方ではないけれど、その子なりの遊び方を見守る。
AとB、2人の保育士さんの行動は全く異なるものですが、これがまさに保育観の違いです。
Aは、迷路の正しい遊び方を教えることで、子どもへ新しい知識を付けようとしています。一方、Bは子どもの想像力、創造性を伸ばすため、見守る姿勢を取りました。
どちらが正しい、間違っているということはなく、どちらも目の前にいることどものことを考えて選んだ行動であり、どちらの方法も正しいと言えるでしょう。AとBがお互いの保育行動を理解するためには、保育士さん同士が「それぞれの保育観を持っている」ということを忘れないことが大切です。
保育観の違いを感じたときの対処法
「それぞれがそれぞれの保育観を持っている」と理解はしていても、複数人で担任を持つことが多い保育園では、保育観の違いによる悩みが多いもの。タッグを組んでひとつのクラスを運営していく以上、お互いに深いところまで見えてしまうので当然のことですよね。では、そんなペアの先生との保育観の違いによる壁に当たったときはどうすればいいのでしょうか?
他の保育士さんを敬い理解する
お互いの保育観が合わない時、大切なのは他の保育士さんの考えを敬い、理解しようとすることです。もし考え方が異なっていても相手を批判せずに、一歩下がって相手の良い部分を探してみてください。すると、相手の良いところが見つかるはず。そして、その良い部分を自分にも取り入れみることで、相手をより理解できると思います。もし理解できない点があったときは、その疑問を直接相手に聞いてみてましょう。
視点を変えて考える
保育観が理解できない相手でも、あなたの知らないところで子どもたちにケアを行っていることもあるかもしれません。そのため、相手の保育に疑問を持ったときは、少し違った目線で見てみるのが大切です。そうすることで、自分の中にはない相手の考え方が見えてくることもあります。初めから不信感を持ってしまうと、相手の理念や本当の考えが見えなくなってしまいますよ。
自分の考えを相手に伝える
保育観が異なっていて、違和感がある場合には自分の考えを相手に伝えてみてください。改善点や対処法があればアドバイスをするのもいいでしょう。保育観が違っていても、話し合って「子どもが第一」という共通の想いを確認することができれば、お互いの保育を認めることができるかもしれません。また、直接相手に伝えるのではなく主任やリーダーなどに相談するのも良いでしょう。先輩に相談すれば、長年の経験から良い解決方法が見つかるかもしれませんよ。
自分の保育観を見直す
自分の保育観に自身がなくなったとしても、自分の大切にしたいことは変える必要はありません。しかし、自分自身の保育観を見直すことは大切です。自分の保育観を客観視することで、自分の保育観を理解してくれない方の気持ちが分かるかもしれません。もし客観的にみることが難しい場合には、先輩や同僚の保育士に評価してもらうと、新しいアイデアを得られると思いますよ。
どうしても保育観を<br>分かり合えないときは?
保育観とは保育士さんの仕事をする上での軸であり、簡単に譲ることが難しいもの。残念ながらどうしても分かり合えないケースもあります。
例えば、「一緒に働く保育士さんと保育の方向性が合わない」「園の方針自体が自分の保育観と大きく違う」というケース。「子どものために自分はもっとこうしてあげたい」という想いを持ちながら、保育観の違いによりそれを実践できない環境は、保育士さんにとってとても辛いものだと思います。
このように、「保育観がどうしても合わない」と感じた場合は、自分の保育観にあった園を求めて思い切って転職を考えることも一つの方法かもしれません。
自分の保育観が理解される環境が見つかれば、自分の理想とする保育を思い切り実践することができるでしょう。
保育観の違いをプラスに向けよう
保育観の違いによる悩みは保育士さんとは切っても切り離せませんが、前向きな話し合いを進めることで、よりよい保育に結びつくことも多くあります。考えの違う相手と向き合うのは大変ですが、お互いにマイナスな点ばかりをとらえるのではなく、相手との違いから「子どもにとってプラスになること」を見つけ出すいい機会にしてみてくださいね。(終了)【保育士向けオンラインセミナーのご紹介】保育士ワーカーを運営するトライトグループでは、令和3年7月27日に「保育士の保育観」をテーマにしたオンラインセミナーを開催
することになりました。今回のセミナーの登壇者には、「こどもの王国保育園」園長の菊地奈津美さんをお迎えします。セミナー概要
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