保育士になって6年。月のお給料は手取りで14万円…なかなか上がる様子もないけど、このまま続けていていいのでしょうか。 かわいい子ども達の笑顔に囲まれ、とてもやりがいのある仕事“保育士”ですが、毎日の多忙さとは裏腹な安すぎる給料が多くの保育士さんの悩みの種になっています。さらに、同じ保育士でも公立と私立には差があり、私立保育園で働く保育士は特に厳しい状況におかれています。保育士は子どもの人格形成や成長に関わる専門性の高い仕事であり、国家資格まで取得して勤めるのにも関わらず、給料事情はなかなか改善されません。保育士の給料が安い理由を探っていきながら、少しでも給料をアップする方法について見ていきましょう。保育士の給料はなぜ安い?2つの理由を解説!
保育士の給料には「資格を持っているのに評価されていない」など、不満の声が多くあがっています。実際に東京都が行った、平成30年保育士の実態調査でも、保育士の退職理由の第1位は「給料が安い」という結果が出ています。待機児童が社会問題化し、保育士の需要は高まっているのに、なぜ保育士の給料はなかなか改善されないのでしょうか? 1. 「公定価格」の壁とギリギリの運営
公立の保育士の給料は、地方公務員として定められた金額があるため、園の運営状況に左右されることはありませんが、私立保育士の場合は事情が全く異なります。私立保育士の給料のおおもととなるのは国からの補助金。私立の認可保育園は、「公定価格」を基準として計算された補助金を国から受け取っています。「公定価格」とは、国が定めた子ども1人あたりに必要な費用です。しかし、この補助金の基準となる「子ども1人あたりに必要な保育の費用」が、保育現場の実態に合っていないという指摘があります。 例えば、子どもに対する保育士の人数は ・4歳以上児30人につき1人 ・3歳児20人につき1人 ・1、2歳児6人につき1人 ・0歳児3人につき1人とされています。ここで大きな問題になってくるのが、実際にこの人数で保育が成り立つのか?ということ。しかし実際にはこの基準どおりではとても保育士の手が回らず、十分な保育を行うことができないため、結果として保育士を追加して配置しているもあるようです。しかし、支給される補助金は基準通りに計算された金額。保育士10人分として支給された補助金を、20人で分け合うというようなことになり、当然十分な人件費が確保することができません。このように、公定価格で定められた保育士数と、実際に働いている保育士人数の差が、保育士の給与を抑えしまっている
こともあります。また、もう1つの収入源である保護者からの保育料も、自治体によって定められた最低ラインの金額となっており、人件費を支えるような大きな収入にはならないのが実情です。保育園は利益を追求するための施設ではないので、当然、運営の中で収益を上げることもできません。私立の保育園は、ギリギリの基準で定められた補助金と、保護者からの保育料だけで運営していかなくてはならず、その結果、保育士の給料を安くさせてしまう構造を作り出しているようです。 2. 保育士が軽視されてきた歴史
もう理由の1つとして挙げられるのが、保育士の歴史です。
保育士は子どもの人格形成期に長時間かかわり、命を預かる大変責任のある仕事。
しかし、保育園としてのシステムが始まった当初、保育士は、保母さん・保父さんと呼ばれ、子どもを一時的に預かり面倒を見てくれる存在として見られていました。
「子どもをみる」という仕事内容から、子育ての延長という認識になり、実際は多くの経験や知識が求められる仕事でありながら、その専門性が軽視されてきた背景があります。このようなイメージは徐々になくなりつつありますが、昔の考えが今でも一部にはあり、保育士全体の社会的価値が正当に認められず、低賃金問題の一因となっています。
そして、金額そのものの問題だけではなく、仕事量と給料が見合わないという問題もあります。
保育士の仕事は、子どもがいる時間の保育のほかに、指導案の作成、行事の準備、園の清掃や一般事務まで、盛りだくさん!
ほかの業種であれば専門の部署が行うような仕事も、全て保育士がこなさなくてはならないのが多くの保育所の現状ですよね。
こうした仕事量の多さも、より一層”給料が安い”と感じてしまう原因となっています。 保育士の給料はどのくらい安いの?
仕事量に見合わず安いと言われる私立保育士の給料。では、実際にはどのくらい安いのでしょうか?
公立と私立を比べると?
公立私立の保育士の給料を比較してみてみましょう。
参照:文部科学省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果( 収支状況等)」あくまで平均ですが、公立の方が高く、差は毎月17,639円。年収として計算すると×12ですから、年間でおよそ21万円という大きな差が出てくることになります。次に、もう少し細かく見るために、一例として大阪市の状況をとりあげてみます。これは、平成30年4月の大阪市の調査をもとに、公立保育士・私立保育士・一般の短大卒の給与を年代別に比較したものです。 私立保育士の給料は全年代で、公立保育士だけでなく、
一般の短大卒よりも低いことがわかります。
大変厳しい結果ですね…。
また、この調査結果の中で大阪市は
・民間の保育士は、半数以上が20歳台
・勤続年数は8割以上が10年未満
としています。
「給料が低すぎて長く続けるのが難しい」というのが私立保育士さんの現実のようです。 埋まらない公立と私立の保育士の給料差
では、公立と私立の保育士のあいだに、なぜこのような差が生まれてくるのでしょうか?■公立の保育園で働く保育士は地方公務員公務員は年功序列制で定期昇給があり、勤続年数が長いほど給料も高くなるため、その定期昇給の差が、公立と私立の給料の差を生んでいます。もちろん、私立保育園でも昇給等はありますが、経営状態や園の方針にもよるため、必ずしも期待できる内容とは限りません。私立の認可保育園には自治体からの補助金も導入されていますが、先ほども触れたように運営自体に余裕がない園が多く、保育士の給料にはなかなか反映されません。■公立の保育園の採用難易度は高い傾向にある「給料が少しでも高く安定した公立保育士になればいいのでは?」とも思えますが、そんなに単純なことではありません。公立保育士は待遇が良いため辞める人が少なく、募集が行われるのは少人数。公立の保育士になるのは狭き門となっています。実際、平成30年度の大阪市の競争率は短大卒程度で15倍※。かなり厳しい状況であることが分かりますね。※参考:大阪市HP「平成30年度実施状況・要綱」 保育士の年収は近年少しずつ上昇中!
こうした厳しいお給料事情の中で頑張っている保育士さん。世間ではやっと、「保育士の処遇改善を!」と言う声が表に出てきました。政府による対策が徐々に実施されてはいますが、実際に保育士の年収は増えているのでしょうか? 参照:厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」グラフは2013年から2018年までの男女別の年収
を表しています。保育士の平均年収は、6年間で女性が47万円、男性が56万円上昇していることがわかります。待機児童が社会問題化し、2013年、政府は保育士の待遇改善をスタート。さらに、2017年4月からはベテラン保育士を支援するキャリアアップ制度などが開始され、政府はさらなる保育士の処遇改善に取り組んでいます。 今は厳しいけど、こうしてみてみるとこれから少しずつお給料アップが見込めるのかも…。
現状辛いと思っている方ももう少し頑張り続けみてはいかがでしょうか。 私立保育士の給料を上げる方法2選!
統計的には保育士の年収が上がってきていることがわかりました。
しかし、現場ではまだまだ給料のベースアップを実感できていないのが現状です。
次は、私立保育園に勤めながら給料をアップさせるために、今できる方法について見ていきましょう。
方法1. キャリアアップで昇給!
私立保育士さんのお給料をアップさせる方法、それは役職に就くことです。保育園においての役職は、主に主任保育士が挙げられます。主任保育士は、現場保育士の最高責任者という重要な存在。多くの場合、クラス担任を持たず、保育士の指導育成や園全体の運営を支える役割を担います。 また、近年は政府による”保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善”に基づき、「副主任保育士」、「専門リーダー」、「職務分野別リーダー」といった新たなキャリアアップ制度の構築も進められています。 主任保育士の給料は月額約38万円
私立の常勤保育士の職種別給与月額を見てみると、一般の保育士の月額が約25万円なのに対し、主任保育士は約38万円となっています。※
私立の常勤保育士の職種別給与月額
| 常勤 | 非常勤 |
保育士 | 255,415円 | 153,156円 |
主任保育士 | 383,029円 | 242,918円 |
主任保育士になるには豊富な経験が必要
では、主任保育士になるにはどうすればいいのでしょうか?主任保育士になるために、特別な資格は必要ありません。ただ、十分な保育の知識と技術が求められるため、保育士としての豊富な経験が必要となります。私立保育園の場合では、7~8年程の経験を経て主任となるケースが多いようです。
また、2017年に始まった保育士のキャリアアップ制度を利用して「副主任保育士」や「専門リーダー」を目指す方法もあります。これまで曖昧だった保育士さんのキャリアですが、キャリアアップの明確な指針として注目したい制度です。
キャリアアップ制度を活用しよう
2017年に始まった保育士のキャリアアップ制度を利用して「副主任保育士」や「専門リーダー」、「職務分野別リーダー」を目指す方法もあります。「職務分野別リーダー」は約3年以上の勤務でのキャリアアップが目安で、月額5,000円の処遇改善がなされます。「副主任保育士」と「専門リーダー」は、概ね7年以上の勤務経験と職務分野別リーダーとしての経験などを要件としており、月額4万円もの処遇改善がなされます。これまで曖昧だった保育士さんのキャリアですが、キャリアアップの明確な指針として注目したい制度です。
方法2. 好条件の園へ転職!
キャリアアップについてご紹介しましたが、職場の状況によっては、自分の努力だけでは解決につながらないケースもあります。例えば、自分より勤務年数の長いベテランの保育士が多くいる園では、いくら頑張って主任を目指したとしても、なかなか自分の順番が回ってこず、いつまでも役職に就けないといった場合もあります。それでも保育士として今より給料をアップさせたい!そんな時は、思い切って転職してみるのも1つの方法です。
保育士不足が深刻な問題となっている今、保育士の求人は増加中です!募集を行う園には、少しでも優秀な保育士を獲得したい思いがあり、保育士の待遇について改善を行っている園もあります。探し方によっては「今よりもずっと良い!」と思える好条件の保育園に巡り合える可能性もあるんです。 保育士の転職で給料UPを狙うなら人材紹介サービスがおすすめ!
転職の目的は給料のアップ!でも、いくら給料が良くてもほかの条件が整っていなくてはせっかく転職したところで長く働くことができません。いざ働いてみたら残業や仕事量が多くてということは避けたいですよね。個人の転職活動では、求人票の情報だけで応募先を決めなくてはならず、実際に働く場合の状況や人間関係を事前に知ることは難しいもの。そんなときは、保育士専門の人材紹介サービスを利用するのがおすすめ。担当アドバイザーに希望の給料と条件に合った職場を探してもらいましょう!■人材紹介サービスで保育園の働きやすさを事前に知ろう!人材紹介サービスを利用することで、保育園の働きやすさや人間関係など詳細情報を事前に知ることができ、転職後の「こんなはずじゃなかった」といったトラブルを回避することができます。■給料の交渉や好条件の求人も人材紹介サービスで!保育士としての経験を給料に反映してもらうよう、アドバイザーを通して交渉することも可能。給料アップの実現に繋がります!そして、人材紹介サービスに登録すると、一般には公開されていない好条件の求人を優先的に紹介してもらえる場合もあります。サービスを上手に利用して、給料アップを目指しましょう!▶アドバイザーに相談してみる▶給与水準が高い求人を見てみる 保育士のキャリアアップ・転職で安い給料を脱却!
保育士の給料は徐々に改善されているものの、まだまだ現場では実感できていないのが現状です。モチベーションを保って働くために、給料はとても大切な要素。これから「保育士としてどのように働きたいのか」を見つめ直して、キャリアアップを目指したり、自分にあった職場に出会えるように積極的に活動してみましょう!