保育園では、子ども達が朝から夕方まで長い時間を過ごしています。
そのため、子ども達が安全に、かつより良い保育を受けられるよう、保育園を設置する際の基準が設けられています。
この記事では、厚生労働省が設ける保育所の設置基準について詳しく解説します。
また、職員の配置基準についてもわかりやすくご紹介しますので参考にしてください。
保育所設置基準とは?
保育所の設置基準とは、保育園を設置するにあたり定められている、保育室の広さや職員数などの基準のことです。
保育園を運営するためには「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たす必要があります。
すべての基準を満たす保育施設を「認可保育園」といいます。
一方、なんらかの事情があり、認可基準を満たしていない施設は「認可外保育園」にあたります。
認可保育園の保育所設置基準
認可保育園は、国が定めたすべての基準をクリアしていなければ運営できません。
基準をクリアすることで、国や自治体から補助金を受け取れます。
入園する子どもは、自治体の選考により決定されます。
認可保育園の主な設置基準・職員配置基準は以下のとおりです。
認可保育園の設備基準
認可保育園の設置には、とても多くの基準が設けられています。主に、従うべき基準と参酌(参考に)すべき基準に分けられます。まずは、従うべき設置基準についてです。0~1歳児を入所させる場合● 乳児室の面積基準 : 1.65㎡以上/人
● ほふく室の面積基準: 3.3㎡以上/人
● 医務室/調理室/便所
2歳以上児を入所させる場合● 保育室又は遊戯室の面積基準 : 1.98㎡以上/人
● 調理室/便所/屋外遊戯場
なお、屋外遊戯場は園庭でなくても、必要な面積と安全が確保されている場合は最寄りの公園でも可能です。続いて、参酌(参考に)すべき基準には以下のようなものがあります。● 必要な用具の備え付け
● 耐火上の基準
● 保育時間
● 保護者との密接な連絡
合わせて、保育室を2階以上に設ける場合は、万が一の避難経路や転落事故を防止する設備などを設ける必要があります。なお、自治体が上記の内容を上回る基準を定めていることもあります。お住まいの地域で、どのような基準を定められているか確認してみましょう。参考:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する基礎資料」 認可保育園の職員配置基準
認可保育園の従うべき設置基準には、職員の配置基準も設けられています。保育士● 0歳児/子ども3人に保育士1人
● 1・2歳児/子ども6人に保育士1人
● 3歳児/子ども20人に保育士1人
● 4・5歳児/子ども30人に保育士1人
保育士以外● 嘱託医
● 調理員
保育士の配置基準は、上記の基準を下回らないこと、常時2名以上の保育士を配置することが原則です。なお、看護師を配置している保育園はたくさんありますが、配置基準に定められているわけではありません。いわゆる努力義務にとどまっているといえるでしょう。参考:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する基礎資料」 認可外保育園の保育所設置基準
認可外保育園の設置には、「認可外保育施設指導監督基準」が設けられており、認可保育園よりも緩やかな基準となっています。
国が定めた基準をクリアしていないため補助金を受けられません。
入園する子どもは、自治体を介さず自園で選考できます。
認可外保育園の設備基準
認可外保育園は、保育の質を確保・向上するため認可外保育施設指導監督基準に沿って運営されます。主な設置基準は以下のとおりです。子ども1人に対する面積基準● 乳幼児6人以上の場合は子ども1人に対し1.65㎡
● 乳幼児5人以下の場合は適切に保育を行える広さ
● 0歳児保育は別室が望ましい
そのほか、調理室やトイレ、保育室の環境などに関するさまざまな基準が設けられています。また、認可外保育園といっても、企業型保育園や一時預かりなど形態ごとに基準が異なる場合があるため注意しましょう。参考:文部科学省「認可外保育施設指導監督基準」 認可外保育園の職員配置基準
認可外保育園の職員配置基準は、児童福祉施設最低基準第33条第2項に基づいて認可保育園と同じ基準となっています。保育士● 0歳児/子ども3人に保育士1人
● 1・2歳児/子ども6人に保育士1人
● 3歳児/子ども20人に保育士1人
● 4・5歳児/子ども30人に保育士1人
保育士資格の有無については「保育に従事する者のおおむね3分の1以上は、保育士または看護師の資格を持っていること」と定められています。そのため、職員の半数以上が資格を持たない人でも運営可能です。参考:文部科学省「認可外保育施設指導監督基準」 保育士不足によりおこなわれた基準の緩和とは?
子ども達の安全、かつ質の良い保育の提供のために設置されている保育士の配置基準。しかし、必要な保育士が確保できずに待機児童が増加している問題から、保育士配置に関する規制緩和がおこなわれています。今までに実施されてきた緩和施策は以下のとおりです。● 朝夕の子どもが少ない時間帯の配置緩和
● 保育士資格以外の教員免許の活用
● 子育て支援員の代替による人材確保
幼稚園教諭免許や小学校教諭免許を取得している人、看護師や保健師、子育て支援員研修を修了した人などを保育現場の一員としてカウントすることで、保育士不足に対応しています。 本当に足りている?職員配置基準の実態
保育士の配置基準は、あくまで最低基準であって現場が必要としている配置とは大きく異なります。
現場からの声を聞き、国が定めた配置基準プラス1名を基準にしている自治体も。
0歳児3人に保育士1人では、全員が泣いてしまえば両手に抱えても2人しか抱っこできません。
0歳児6人に保育士2人だとしても同様です。
1人がオムツ交換を始めれば、1人で5人の0歳児を見ることになります。
ずっと泣いている子、なんでも口に入れる子、つかまり立ちをしては後ろに倒れてしまう子、成長スピードの差が大きい0歳児の保育は、本当に大変です。
ほかの年齢でも、1人の保育士が子どものケンカの仲裁に入れば、その間ほかの保育士の負担が大きくなります。
すべての子どもに目を向けられず、新たなトラブルが生じることも珍しくありません。
そのため、現在の保育士配置基準では満足とはいえないでしょう。
保育現場で事故が起きるたびに、保育士配置基準の見直しを求める声が挙がります。
子どもがより良い環境で保育を受けられるよう、今後も新たな基準緩和がおこなわれると考えられます。
保育所設置基準を満たしていない場合
認可保育園は、保育所の配置基準を満たすことで運営が成り立ちます。では、基準を満たしていないことが分かればどうなるのでしょうか?実は、児童福祉法施行令において、各都道府県が年1回以上、実地監査をおこなうことが義務付けられています。監査にはさまざまな項目が盛り込まれており、基準を満たしていない場合は改善指導がおこなわれます。再三にわたる忠告に応じず、改善がおこなわれない場合は閉鎖を余儀なくされるため注意が必要です。参考:厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する基礎資料」 まとめ
保育園を設置する際は、さまざまな設置基準をクリアする必要があります。
国が定める設置基準をすべてクリアしている保育園を「認可保育園」と呼びます。
建物の設置基準や保育士の配置基準は、子ども達の命を守るために大切な基準です。
認定を受けたあとも、定期的な監査で問題点を指摘されないよう安全に運営したいですね。